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ピンポーン。
寝室を出て、リビングにあるドアホンのモニターを見る。煙草を咥えた、見覚えのある銀髪の男が映っていた。
溜め息を吐く。
チェーンを外し、鍵を二個開ける。
「何?」
開いたドアの隙間から、
「よぉ。とりあえずさびーから、中入れて」
明るい色の付いた声が、流れ込んできた。
男の手には、小さなビニール袋がぶら下がっている。
ドアの取っ手に手を掛けたままのオレを、強引に押し、男は煙草と共に玄関の中へ入ってきた。
「でっ、何?」
「ちょっとさ、冷たくない? 半年ぶりに会う元彼に向かって、その言い方」
「だから、何?」
「ヤりに来た」
明るい声。
男の声は、赤やオレンジや黄色みたいな色をしている。オレの部屋に、そんな色の音は存在しない。
声のわりに、男は強い力でオレの目を見ていた。
男は玄関にブーツを脱ぎ捨てると、「うわ、あったけー」独り言を言いながら、部屋の中へずけずけと入っていった。
その指には、煙草が挟まっている。
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