3.数十分ぶり。

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 テーブルにマグカップを置き、手に取ったスプーンを赤色のソースの中に沈める。  スプーンの上に、とろりとした赤い粘液(ねんえき)を載せた、つやつやの白い物体が載った。 「どお? うまい?」 「たぶん」  初めて食べる、味、食感。    でも、きっと、たぶん。  うまいんだと思う。 「そっか。こっちも食っていいよ」  コーヒー色の粉がかかったものを、オレのほうへ少し押しながら言った。  粉の下には、白と茶色の層ができている。  ひと口すくって、口へ運ぶ。 「うまい?」  あ、たぶん、これ、うまい。 「たぶん」  もう一度スプーンですくい、口へ運んだ。 「そっか」  男は嬉しそうに言った。  オレの腹は、二つとも半分以上残して限界になり、 「腹いっぱい」  マグカップを両手で包み込んだ。
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