4.午前三時。

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 男の腕に力が入り、体を引き寄せられたように感じた。  気のせいかとも思った。  でも、密着していた男の体と体温を、より強く背中に感じた。 「何、見てんの?」  男が聞いた。  オレの目の前には、ただ黒いだけの空が広がっていた。 「なんも」 「そっ、か……」  肩に、こつんと何かがぶつかる。  同時に、視界の端に男の銀色の髪が見えた。 「ねぇ……俺と、付き合ってよ……」  うしろから聞こえた、低く暗い、男の声。 「あぁ」  無意識にこぼれた。  オレの頭はたぶん、少しも働いていない。  ただ、喉から声が、こぼれただけ。  男の言葉に、意味なんてない。  オレの答えに、意味なんてない。  ただ、こぼれただけ。  意味なんて、何もない。  二本目の煙草を咥え、ライターで火を点けた。  オイルの匂いが、ふわりと風に流されていった。  男の腕に力が入り、体を強く引き寄せられた。  痛みを感じる、一歩、手前。  温度を上げた体温だけでなく、男の鼓動までもが、背中に伝わってくるようだった。
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