4.午前三時。

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「俺んこと……好きになってよ……」    男の声は、(おび)えているみたいに、小さく震えていた。  息を()んだ。そのまま呼吸が詰まった。  全身の筋肉が一瞬で強張(こわば)り、体が固まった。  形になり(そこ)ねた言葉が、溶けるように消えていった。  バカだ……。こいつは、バカだ……。  息苦しさを感じた。  体に酸素が、全く入ってこない。  どれだけ空気を吸い込んでも、強張った内臓が、それを全力で拒絶してるみたいだった。  心が動いた分、傷は深くなる。  穴は大きくなる。  痛みは強くなる。  それなのに、なんで……。  なんで、そんなくだらないことを言う……。  バカだ……。  こいつは……、バカなんだ……。  
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