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驚いたように、一瞬だけ目を見開いた男を、下から見上げる。
「屈め」
身長のことで、特にコンプレックスがあるわけではない。
ただオレの中に、この見上げるという行為が、どこか気に入らない、という思いがあるのかもしれない。
それは行為自体が、なのか、相手が男だから、なのか。
自分でも、よく分からなかった。
膝を曲げ、男は素直に屈んだ。
いつも上にあった男の顔が、オレより低い位置へ移動した。
それを見下ろしながら、煙草を咥え、ゆっくり吸い込んだ。
何を思っているのか、男はじっと、オレの目を見ていた。
その視線を跳ね返すように、オレもじっと見続けた。
いつもオレを見下ろしていた、男の目を。
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