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「コーヒー」
軽く畳んだダウンを、リビングの床に置いた。
「え? 今飲んだら寝れなくなるよ?」
「まだ仕事終わってねぇ」
「なぁ!『おいしいコーヒー淹れて』って可愛く言って」
きらきらした声で男が言った。
くだらない。マジで、くだらない。
男も、男の言葉も素通りし、キッチンへ向かう。
「待てって! ちゃんと淹れるから。待ってて」
男は焦ったように オレの手首を掴んだ。
リビングの壁に、背中をくっつけ、ぼんやりと天井を見上げる。
変な一日だった。
ずっと、音がある。
俺の部屋に、音がある。
明るい色の付いた、音が……。
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