4.午前三時。

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「熱いから気をつけろよ」  目の前に、マグカップが差し出された。  コーヒーの匂いがする、透き通った湯気が、ゆらゆらと立ち昇っていく。  両手で包み込むようにして、受け取った。  冷えた手にじんわりと熱が伝わり、血液が動き出していくのが分かった。 「なぁ、ここにソファ置こうよ。二人で座れるやつ」  男がきらきらの声で言う。 「いらない」 「ケツいてーだろ?」 「いらない」 「んじゃ、ラグ敷こうよ。ふかふかのやつ」 「いらない」 「二人でイチャイチャごろごろできるし」  きらきらが増した男の声が、オレの耳を通り抜けていった。  マグカップを傾け、コーヒーを体の中に流し込む。 「んじゃ、せめて、クッション買おー? ケツ痛い」  男はオレに腕を(こす)り付けるようにして、横にぴたりとくっつきしゃがみこんだ。  あぁ……。  分かった。  男の声は、赤色だ……。  赤やオレンジや黄色色じゃなくて、赤だ。  こいつの舌と同じ、赤色だ……。    だから、オレには強過ぎて、(まぶ)しんだ……。
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