92人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「仕事終わったら、セックスしよ?」
赤いきらきらの声で、男が言った。
「は? お前はサルか」
こいつの頭の中には、ヤることしかないんだろうか。
男は嬉しそうに、オレの頬に軽く唇を当てた。
「お前にずっと、言いたかったことがあるんだ。……だから、しよ?」
きらきら、きらきら、うるさい声。
遠慮なくぶつけられる、眩しい声。
会話を断ち切るように、口に付けたマグカップを傾けると、男がいきなり喉に吸い付いてきた。
「ちょっ、こぼれんだろっ!」
「ベッドで嫌っちゅうほど言ってやる」
「うぜぇ」
眩しんだよ!
お前のその、赤くてきらきらの声が。
心が動かなければ、傷付かない。
穴は空かない。
痛まない。
だったら、そのほうがいいだろ?
オレはこの、白と黒の空間に溶け込んで、消えてしまいたいんだよ。
『無』になりたいんだよ……。
だから、そんな……。
きらきらの声、ぶつけてくんなよ!
眩しんだよ……。
お前のその、赤くてきらきらの声が……。
オレには、眩しすぎんだよ……。
お わ り
最初のコメントを投稿しよう!