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「トロールは確か人を食らう怪物だったはず。無視して通り過ぎるか、目覚める前にぶっ倒すかの2択だな」
「今は眠っていて無害でも、後で目覚めて大暴れするかもしれない。もし行方不明のポワールがそのタイミングで遭遇してしまったら……」
「だったら決まりだな」
2人は目の前に寝転がるこのデカブツをぶった斬る気満々だ。
久々の魔族との戦闘……とても腕が鳴るわ!とは言っても、私は後方支援だけどね。
「それにしても気持ち良さそうに寝ているな……いくら人を食う化け物とは言え、不意打ちで倒すのは申し訳ないな」
タカオは謎の騎士道精神で眠っているトロールをわざわざ起こしてから倒すことに決めた。
敵にチャンスを与えるなんて……って怒りたくなるところだけど、戦いが楽しみな気持ちもあったから敢えて止めなかった。
まあ、パワーはありそうだけど如何にもノロマそうだし、この2人なら無傷で倒せるに違いない。
「起きろ、トロールっ!」
タカオは大声で叫ぶが怪物は目覚める気配がない。ぐっすりと眠っている。
「見るからに鈍感そうだ。顔を一発蹴りでもしなけりゃ起きねぇよ!」
ユウガオは助走をつけて飛び上がり、トロールの顔面に全体重を乗せた蹴りをお見舞いする。
「ぐおおおっ⁉︎」
びっくりして起き上がるトロール。
立つと周囲の木々を見下ろすくらいの背丈があり、ブヨブヨの贅肉がまるで鎧のように全身に纏わりついている。
皮膚の表面にはイボイボがついていて、控えめに言っても"醜い"と形容する他ないくらいだ。
「斬りごたえのありそうな立派な体をしてやがるぜ」
「ユウガオ、気を抜くなよ?」
「大丈夫よ2人とも!私がいればあなたたちは死なないわ」
目の前の醜悪な巨人は、眼下にいる私たち"美味そうな人間"を見て涎を垂れ流しながら巨大な手を伸ばしてきた。
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