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「期待を裏切らねぇ鈍さだな。止まって見えるぜ」
ユウガオはトロールの掌を寸前で飛び上がって躱し、空を掴ませると、そのまま手の甲に着地して太く長い腕を駆け上がって行った。
「こういう系統の敵は手足を中途半端に斬ったところで痛みも感じねぇし無意味だ。斬るなら大事な器官が集まっている"顔"に限るぜっ!」
神業とでも称すべき剣捌きで、トロールの顔面をズタズタに斬り刻むユウガオ。
「ぐおおおおっ!」
苦しみ悶えるトロール。ユウガオは喉に剣を突き刺すと、そのまま胸から腹にかけて肉を裂きながら一直線に真下へと降りていった。
「さあ、トドメだ!」
一番美味しいところは主役に譲るユウガオ。
「おのれぇぇぇ!」
傷だらけの怪物は、最後の悪足掻きで私たちを押し潰そうと巨体で倒れかかってくる。……っていうか、喋れたのか?こいつ。
「任せろ!」
タカオが聖剣Xを構えると、剣身が忽ち眩い光を帯びる。
「退魔の光……いつ見ても綺麗ね」
どうやら今回は私の出番はなさそうだ。
トロールは光の剣によって全身を斬り刻まれ、バラバラになった肢体が周囲に激しい落下音を立てながら降ってきた。
「……って、あなたたち何やってんの?もしかしたらトロールなら森の出口を知っていたかもしれないのにっ」
怪物に会話能力があるのなら、殺さずに痛めつけて森の中を案内させるべきだった。
大物を仕留めて歓喜する男2人を背に後悔していると、地面に転がる大きな手の指がピクリと動いたのが見えた。
「まだ間に合うかもしれないわ!」
私の出番は思わぬ形で回ってきた。
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