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「ついてこい…」
地を這い伝わるような低い声で喋ると、怪物は私たちを森の奥へと導いた。
トロールは一歩一歩がかなりゆっくりだが、歩幅はとてつもなく大きいので、小走りで追いかけて丁度良いくらいのペースだった。
「お待ちくださいっ!」
しばらく森を進んでいると、背後から急に少女の声が聞こえてきた。
「皆様、そちらは底無し沼のある方向ですわっ」
すると、トロールは振り返って気不味そうな表情を浮かべた。
「何だって?それは本当なのか⁉︎」
「おいデカブツ!俺たちを騙してたのか?」
企みがバレたトロールは逃げようとして、全身の贅肉を揺らしながら大股で駆け出す。
「待ちやがれっ」
「お待ちください。森の出口なら、私がご案内致しますわ」
追いかけようとするユウガオだったが、声の主に制止されて立ち止まる。
私たちがその声の方へと振り返ると、そこに立っていたのは見覚えのある美少女だった。
「あ、あなたは……ポワール⁉︎」
幸運なことに、探し人は自分の方から私たちの目の前に現れてくれたのだ。
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