3.救いの女神

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 「案内する……って、あなた森で迷ってたんじゃなかったの?」  「麓の集落の人間にとって、ここは庭同然ですわ。私はお母様の腰痛を治すための薬草を摘みに来ただけ……でも、その薬草が見当たらなくて困っていたのです」  庭だったら、どこにその薬草が生えてるかも把握してるんじゃないの?    「腰痛だったら、マリーの癒しの力があれば治せるはず……ポワールさん、集落まで案内してくれませんか?」  私の意思を無視して勝手に"治す"だなんて言わないでもらいたいわ……  でも、これでやっと森から出られる。  「私について来てください」  彼女は私たちを背中で導きながら一切の迷いなく森の中を突き進み、あっという間に外へと抜け出した。  「けっこう森の中を分け入ったような感覚だったけど……実は全然進んでいなかったんだな」  「要するに、同じところをぐるぐると回っていただけってことか」  「助けに入ったはずが、まさか助けられちゃうなんてね……」
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