3.救いの女神

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 「うっ……君の実力はよくわかったよ」  「それじゃあ、連れて行ってくださるんですね⁉︎」  心配する両親をよそにつぶらな瞳を輝かせるポワール。  「君にその覚悟があるなら僕は構わない。でも、もし旅に出たら二度と故郷には帰れないかもしれないんだよ?霊峰を越えればトロールなんて遥かに凌ぐ強い魔族たちがウヨウヨしている。命の保障はできな……」  「待って!」  私は思わず叫んだ。  「何言ってんの⁉︎この最強の"癒し手"であるマリー様がいる限り、誰一人として死なせはしないっ!それともあなた、私のこと信頼してないっていうの?」  確かに旅のリーダーはタカオかもしれない。でも、仲間たちの命を預かっているのはあなたじゃなくて、この私よ!  「君は……ポワールと同じくらいの歳に見えるが、勇者様の仲間として立派にご活躍されているようだな。そんな君に出会った娘が触発されて、自分も世界を救う一助になりたいと思うのは至極当然のことなのかもしれないな…」  「お父様……」  「ポワール。私たちは今まであなたのことを過保護に育ててしまったかもしれないと思っていたわ。けれども、私たちが思っていた以上にあなたは強く育っていたのね」  「お母様……」  なんと……私の一声をきっかけに、両親共に愛娘を旅へと送り出すムードになってしまった。  「改めてお願いします。私を、旅に同行させてくださいっ!」  深く頭を下げるポワール。  「頭を上げて?お願いするのは僕の方だよ。力になって欲しい。一緒に来てくれないか?」  タカオもすっかり彼女を仲間に迎え入れる気のようだ。  「これでまた一段と戦力アップだ!一緒に魔王をぶっ倒そうぜ」  ユウガオが握手を求めると、ポワールは嬉しそうに手を握り返した。  「マリーさん……ありがとう!みんなを後押ししてくれて」  そして彼女は、満面の笑みで私にお礼を言ってきた。  その無垢な笑顔を見ていると、何だか心が和らぐというか、温まるというか……"癒される"ような感じがして、思わず目線を逸らしてしまった。  「い、言っとくけど私は後方支援専門だからね?戦いは任せたわよっ」  「はい!これから、よろしくお願いしますっ」  その日、新しい仲間を迎えた私たちは屋敷で十分に休息をとり、翌朝に集落の人々から見送られながら森へと旅立った。
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