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「マリー!ポワール!気付かなくて悪かった……2番目に強い俺が後ろを歩くぜ」
咄嗟に気を利かせて最後尾に回るユウガオ。
女子2人を2強で挟んで前からも後ろからも守りながら進む……この並びが一番合理的なのは言うまでもない。
男性陣が最初からそうしてくれていたら、私は気を病む必要もなかったのに。
でも、今となってはもう遅い。俯いて小石を蹴りながら、タカオの影を頼りに前へとひたすら黙って進んだ。
「あっ!蝶が飛んでいますわ」
すると突然、ポワールが喜びに満ちた声で飛んでいる虫を指差す。
「そいつは蛾じゃねぇか?」
「蝶じゃないんですか?……でも、とっても綺麗」
ユウガオに蛾だと指摘されても、翅が美しいという事実に変わりはなく、ポワールはキラキラした鱗粉を散らしながら宙を舞う生き物を夢中で眺めていた。
これから過酷な旅路が始まろうとしているのに、何と呑気なんだろう?
「まったく、遠足じゃないんだぜ?」
呆れた様子のユウガオだが、顔には笑みが溢れている。
タカオもそのやり取りを背中で聞きながら緊張がほぐれたのか、先程まで入っていた肩の力が抜けているのがわかった。
もしかして、これは天然と見せかけて態とやっているのか?
……だとすると、このお嬢様は相当計算高い女ということになる。
やがて山道の中腹に差し掛かったが、敵と遭遇することは一度もなかった。
「よし、ここでいったん休息を取ろう」
私たちは岩場に腰掛け、麓の集落で調達した軽食をとりながら疲労した足腰を休めた。
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