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「人の手……?」
それにしては青ざめ過ぎている。
「出てくるぞ……」
その手の主はやがて地表に穴を開け、這い出してきた。
人間……のような姿をしているけれど、まるで生気が感じられない。
そう、私たちの目の前に姿を表したのは、屍人だったのだ。
「これまた厄介な連中が現れたものだ」
「彼らも魔族なのですか?」
「魔族そのものではなく、奴らの操り人形さ。元は人間だったが、その死骸に命を吹き込んで魔族の手先として再利用してやがるんだ」
1体、2体、3体……地中から次々と姿を現す屍人たち。気が付くと、私たちは屍人の群れに取り囲まれていた。
「一気に蹴散らすぞ!」
「タカオの後に続けっ!」
タカオは屍人たちの群れを斬り倒しながら山道を駆け上がっていく。
その背中を必死で追いかける私とポワール。
後ろから来る追っ手たちはユウガオが華麗な剣捌きで始末していった。
「……を…らえよ……」
何回斬られても、屍人たちはまるで痛みなど感じていないかの如く起き上がり、しつこく追いかけて来る。
タカオの剣は退魔の光を纏っていたけれど、それすらも屍人には効いていないようだった。
「癒し手を捕らえよ……」
哀れな魔族の操り人形たちは、口々に"癒し手を捕らえよ"という一文を繰り返しながら私たちへと迫ってくる。
彼らの狙いは……私?
「どうやら狙いはマリーのようだな」
「モテモテじゃないかっ!ガードマンの俺たちは大変だけどよ」
高笑いしながら剣を振るうユウガオ。
余裕ぶっているけれど、額から流れる汗が彼の必死さを物語っていた。
倒しても倒しても無限に現れる敵に、歴戦の勇者と剣豪の体力と気力は着実に削られていく……
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