2.不幸の兆し

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 故郷を離れ、北の大地に足を踏み入れようとする私たちの前に立ちはだかる白銀の霊峰・アルギュロス。  その麓に、1つの大きな集落があった。  私たちはそこで防寒具や食料など、これからの旅に必要な物資を調達していた。  「ちょっと、そこのあんたたち!もしかして、南の城から旅立ったという噂の勇者様御一行かい?」  声をかけてきたのは、貴人に仕える使用人のような風貌の男だった。  「ええ、私たちこそ魔王を倒す救世主だけれど、何か御用?」  あまりに突然で戸惑うタカオたちを尻目に、真っ先に私が問いかけた。  「実は、村長(むらおさ)のお嬢様が森に入ったまま戻って来られないのです」  「そのお嬢様を探せってことね?勇者を便利屋か何かだと思って…」  「霊峰の山道へと続くこの先の森は、僕たちにとってはまだ未踏の領域……きっと魔族たちが住み着いているはずだ」  「俺らも山を越えるには森に入らなければならねぇ。その道中で見つけられるかもしれないな」  あまり乗り気じゃない私を他所(よそ)に、男性陣はお嬢様探しに前向きな姿勢を見せる。  あわよくば、助けたお嬢様と結ばれるのを期待してるのかしら?
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