2.不幸の兆し

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 「さあ、中へどうぞ」  案内されるがままに大きな門をくぐり、庭園を抜けて屋敷の中に入ると、そこには見るからに村長という印象の小太りの男性がいた。  「村長様、噂の勇者様御一行を見つけて参りました」  「それは(まこと)か?」  村長は疑うような目で私たちの姿を隅々まで見てから言った。  「そなたが持つ黄金の鞘に入ったその立派な剣は、紛れもなく聖剣Xであろう。正真正銘、本物の勇者タカオ殿とお見受けする。そして、腰に瓢箪をぶらさげたお仲間は……相棒の剣士ユウガオ殿か。2人とも噂に聞いていたのと全く同じ風貌で安心したぞ」  私のことには一切触れないデブ親父。彼らの命の恩人だぞ?勇者一行になくてはならない存在なのに……  「さて勇者殿。いきなりで申し訳御座らぬが、どうか我が愛しの一人娘を助けてくださらぬか?報酬は弾みますぞ」  プライドの高そうな村長は、そう言って勇者に対し頭を深く下げた。  「任せてください」  「本当か?ならば、よろしく頼んだぞ!」    村長は目を輝かせながらタカオの手を握った。  「おい、早く娘の顔をお見せするんだ」  「かしこまりました」  使用人は主人に促されて思い出したように肖像画を取りに行き、急ぎ足で戻ってきた。  「こちらがそのお嬢様です」  如何にも育ちの良さそうな箱入り娘の姿が額縁の中に描かれていた。  美少女……いや、美化して描かれているだけか。こんなデブ親父の娘がここまで可愛い見た目をしているはずがない。
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