8.新たなる敵

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 「成程、俺にはよおくわかったぜ。ヤツが隙を見せるその瞬間が来るまで、ひたすら休む間も無く斬撃を叩き込み続ければいいんだ!」  ユウガオはタカオに向かってニヤリと微笑むと、神速の斬撃をコランダムの全身に浴びせ始めた。  "よおくわかった"なんて言ってるけど、それって全然わかってないんじゃないだろうか?  敵は呆れた表情を浮かべながら直立不動の状態を維持している。鉄拳の防御術はいくら攻撃しても崩せそうな気配がない……  「どうした?ずっと黙り込んで。本当は痛いのを我慢してるんじゃないのか?」  「……」  ユウガオは攻撃の手を休めることなく言葉で挑発し始めた。あれだけの剣戟を放ちながら会話をする余裕さえあるなんて……手錠という重しが外れた彼の強さは以前を遥かに超えている。  それでも、鉄壁の守りを誇る鬼王族(オーガ)相手には、どれだけ斬れ味のある剣でどんなに速く多く攻撃を喰らわせようと一切効果がない。  屍王には能力の相性がたまたま良かったから勝てたものの、四大貴族っていうのは本当に恐ろしい敵だったんだと私は思い知らされた。  「そういうことか。僕も(ようや)くわかったよ」  タカオは彼らのやりとりを見ていて何かに気づいたようで、意識を集中して鞘に収めた聖剣に力を溜め始めた。  その間もユウガオは敵の体を絶え間なく斬り続けていたが、次第に斬撃の頻度が落ちてきているのがわかった。  コランダムは守りに徹してユウガオの疲労が蓄積する瞬間を狙っているようだ。  このままでは彼が危ない……  「ヤツは攻めに転じることができないでいるわ……弱点を晒すまで、もう少し頑張って!」  私はユウガオの疲労を回復させようと錫杖を掲げた。  「待て。今は彼に任せるんだ」  しかし、タカオは何故か私を制止した。  このままでは鉄拳を回避するだけの体力すらなくなって、まともに反撃を喰らってしまう。  さっきは血を吐くくらいで済んだけど、次は当たりどころが悪ければ私でも助けられないかもしれないっていうのに!  「どういうつもりな……」  「私にだって意図はわからないですが、ここは彼らを信じましょう」  文句を言おうとする私をさらに止めたのは、ポワールだった。  私たちの中で最も付き合いが長く、強い信頼関係で結ばれた2人のことを、今は信じようというのだ。  「くっ……そろそろ手に力が入らなくなってきたぜ」  ユウガオが放つ斬撃の頻度は最初の半分以下にまで落ちていた。  そして、いよいよ指の力が抜け、彼の手から剣が落ちようとしている。  「まずは貴様の命、貰ったぁっ!」  すかさず握りしめた拳を叩き込もうと振りかぶるコランダム。  「今だっ!」  ユウガオの合図でタカオは一気に間合いを詰め、突き出された鉄拳が相棒に直撃する寸前のところで、退魔の光に満ちた聖剣を鞘から敵の胴体目掛けて振り上げた。
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