駅に来るまで

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駅に来るまで

 高校1年の秋、夏休みが終わり、またいつものように学校に行き始めた頃、僕は偶然、先生に仕事を頼まれ、いつもより学校を出るのが少し遅れてしまい、駅までの道を急いだ。  いつもなら電車が来る10分前には駅に着き、電車通学の生徒たちがわらわらと乗り込む中に混ざっていた。  急げばなんとかなると思い、僕は駅に向かって走った。  別に、急いで帰らなければならないわけではない。  ただ一人で1時間近く駅で待つのは退屈なので待ちたくなかった。  正直1時間もあれば歩いて家に帰れるだろう。だが疲れることはしたくないというのが人間の心理だと思う。  学校から駅までは歩いておよそ10分といったところだ。  息を切らしながら走っていると、駅のすぐ側で電車は発車してしまった。  僕はガックリと肩を落とした。  これなら走る必要なんてなかった、結果論だが。  中で座りながらスマホでも見ていればすぐに時間が経つだろうと考えながら、僕は定期券をかざし駅に入った。  1時間も立っているのは苦痛なので、ホームのベンチに座ろうと歩いていくと、制服姿の少女が座って本を読んでいた。  少女は同じ高校生とは思えないような、雰囲気を全身から漂わせていた。  僕は立ち止まり少女を見つめた。  5〜6メートルくらい離れた場所で少女を見つめていた。  周りには僕ら以外誰もいない。  別にやましいことを考えていた訳じゃないが、僕はドキリとした。  少女の美しく、どこか寂しげな姿に見とれてしまった。  横顔しか見ていないが、長い黒髪の少女は目は大きく、鼻筋は通っていて、顔は小さく、まるでテレビや雑誌で見る芸能人のようだった。  少女は僕の視線を気にもせず目の前にある本に集中していた。僕はスマホを取りだし、少女から意識を逸らした。    僕は少女が気になって仕方がなかった。  壁に寄りかかりながら僕はスマホ画面を眺めていた。何か調べたいわけでも、連絡が来ていた訳でもないが、ただ誤魔化すためにスマホに視線をやっていた。  しかし時折少女に目線を向けては、彼女を見つめていた。幸い駅には僕達2人しかいなかった。  部活に入っていない生徒は前の電車で殆ど帰ってしまうので、今駅にいるのは僕と少女だけだった。  そうして時間は流れ、途中、何人かの生徒が駅へやってきた。5時を知らせる音楽が辺りに鳴り響いた後、僕のいるホームに電車がやってきた。  僕は少女の乗り込んだ隣の車両に乗り、座席に腰かけた。  電車に揺られ7~8分ほど時間が経ち、いくつ目かの駅に着いた。振り向き、窓の外に目をやると、後ろ姿の少女が歩いていくのが見えた。  この路線はかなり古いためかなり遅く、電車はかなりゆっくり走っていた。  なんだ、すぐ近くじゃないか、なぜ1時間もわざわざ待ったんだ。歩いて帰れたんじゃないか。そんなことを考えながら僕は後ろの窓から、首を戻し前を向き、電車に揺られた。    
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