駅に来るまで

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 弟とは反対に僕は運動神経は悪く、友達も少ないどころか、今現在1人もいなかった。  別に極度の人間恐怖症だとか、人とコミュニケーションが取れないわけではなかった。  ただ、昔から友達や周りの大人に対して、顔色を伺って接するところが強かった。  今思うと怖かったんだと思う。  人を怒らせたり、ちょっとしたやり取りで不快にさせることを。  だから僕は小さい頃から人の顔色を気にしながら人と接していた。  そしていつの間にかそんな自分や人との繋がりに疲れきっていた。  気がついたときには僕の傍に友達は誰一人として残っていなかった。  僕は人と繋がることを諦めていた。  たとえ誰かといても疲れるだけだ。  すぐに皆、自分から離れていく。  そう思うと、人と繋がっていることが、すごく虚しいことのように感じた。    家族に対してはそんなことは無かったのだが、それと関係なく、家での肩身は狭かった。 弟と違い僕には運動神経も頭も、良いところはなかった。 だからといって、親に弟との扱いに差をつけられたりすることはなかった。  寧ろ両親も祖母もよく気にかけてくれている。  それなのにただ自分で弟と比べ引け目を感じていた。  そんなことを考え、箸が止まっていると、目の前にいる母から声をかけられた。 「ぼーとして、どうしたの」 「ああいや、別になんでもない」  僕が答えると母は、ふーん、といった様子で頷き、箸を動かした。    食後風呂に入ったあと、部屋のベットに寝転がり、本棚にある漫画を何冊か横に並べ、読んでいた。  読んでいる間、あまり内容が頭に入ってこなかった。ずっと今日見た少女を頭に思い浮かべていたのだ。  途中、弟が何冊か借りに来たが、あまり覚えていなかった。
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