駅に来るまで

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 翌日、いつも通り学校へ行った。  1年1組の僕は一番端にある1組の教室に向かう途中、不意に3組の教室を覗いた。  特に理由はなかった。  ただなんとなく、本当になんとなくだった。  その瞬間、足が止まり、後ろの生徒とぶつかった。軽く謝り、僕の視線は教室の中に向いた。  そこには席の前に立ち、荷物を取り出している少女の姿があった。  1年生だったのか、名前はなんていうのか、話しかけてみたい。そんなことを考えながら、少女を見つめていたが、不意に恥ずかしくなり、教室に向かって歩き出した。  その日の授業はほとんど頭に入らなかった。  まあ普段は頭に入っているのかというと、そういうわけではないが。 昨日の少女が同級生だった事実に驚き、感動を覚えていた。 高校に特に親しい友人のいない僕は、他のクラスの生徒などほとんど把握していなかった。  そんな僕にとって少女が同じ学年というのは幸運なことであった。  しかし、だからといって何かが進展するわけではなかった。 その日の放課後、わざと学校を出るのを遅らせ、駅に向かった。  期待しながら改札を通ると、昨日と同じように少女はベンチに座り、本を読んでいた。  僕も昨日と同じようにただ少女を見つめていた。  ────次の日も、またその次の日も僕は帰りの電車を一本遅らせ、少女の姿を一目見ようと駅へ向かった。  少女はいつもベンチの右側に座り、カバーの着いた本に目をやっていた。  僕はその姿を横目で見ることしか出来なかった。話しかけるわけでも正面から見るのでもなく、離れた所から横目で見るのが精一杯だった。  毎日毎日、少女の姿を目にするために、僕は1時間も立ち続けていた。  電車から降りていく少女の顔を見ようとも思わなかった。  電車の中ではいつも、少女への思いを膨らませ、上の空となっていた。  
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