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「……では、ここが〝平安時代とは似て非なる世界〟ということを踏まえた上で、お伺いしたく存じます」
「答えられることなら、いいわよ」
神使の方は、静かに微笑まれた。
「彼女の記憶の中に、私の家族の生死に関することがございました」
「……えぇ」
「『保元の乱』と『平治の乱』は、この世界でも起こることでございましょうか?」
「その可能性は、ないとは言えないわね」
「それは、いかなる訳によるものでございましょうか?」
「歴史は、人々の歩みによって作られるものだから」
「私たちの進む道によっては、起こり得る……と?」
「そのとおりよ」
神妙な顔で頷かれた神使の方。
私は思案する。
前世の歴史のとおりに道を進めば、私の家族は四年後に崩壊する。その前段階として、来夏に『保元の乱』が起これば、〝源為義〟である源のお祖父様を喪う。それを皮切りとして、後に『平治の乱』が起これば……
〝源義朝〟である父上、〝源義平〟〝源朝長〟である異母兄上方を喪う。さらには〝由良御前〟である母上を病にて喪い、側室の義母上方や幼い弟妹たちも、皆散り散りとなる。
〝源頼朝〟となった私は伊豆へ流刑となり、紆余曲折の末に〝源義経〟である異母弟を手にかけ──
これらを回避するには、いかがすればよいのか。
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