5人が本棚に入れています
本棚に追加
些細な、されど大いなる歪み
幼い頃。私の内には、疑念と葛藤が渦巻いていた。
置かれた環境に不満があった訳ではない。
我が家には、正室である母上を始めとして、側室である義母上がおふた方いらっしゃる。住まいはそれぞれ別棟だが、家族仲は良好だ。私たち兄弟も、同母異母問わず仲が良い。
また武家であることから、父上や異母兄上方の官位は高くなかったが、別段どうということもなかった。
『いかなる身の上にあろうと、己の責務を全うするのが、人としての誇りというもの』
源氏の長でいらっしゃる為義公──源のお祖父様の教えが、功を奏したのだろう。
清和天皇陛下の末裔であるという誇り。
己の立場をわきまえ、相手の立場を慮る。
皆が、これらを心に留めながら生活しているからこそ、邸内には、いつも笑顔があふれていた。
最初のコメントを投稿しよう!