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穏やかな光満つ
卯三刻(午前六時)頃。
四歳の宗寿丸を始めとする弟妹たちは、それぞれの対屋 (別棟の住まい)で、すやすやと寝息を立てている時刻だ。
私は広間の入り口でご挨拶申し上げ、母上の隣へ移動して腰をおろした。
三十三歳の父上は、上座で堂々としていらっしゃる。家長としての威厳は充分だが、私たちをご覧になる目は優しい。
母上と私の向かいには、義母上方と異母兄上方が序列に従い座っていらっしゃる。
末席の、常盤の義母上は……
「常盤は、本日も北対にて安静にしておる」
父上から伝えられると、広間がざわめいた。
義平異母兄上と三浦の義母上は、
「初産の時は発症しなかったと耳にしたが」
「ええ。此度は半年を過ぎてから、障りが見られるようになりましたね。線の細い常盤の方は、さぞ心細く思われていることでしょう」
「薬師殿に任せておくしかないのだな」
「はがゆいことですが。そなたもその体躯を無駄にすることなく、できることをしてさし上げなさい」
「母上。無駄とはひどくないか」
「無駄にしなければ良いのです」
このように。
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