穏やかな光満つ

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 朝長異母兄上と波多野の義母上も、 「もう少しで、産み月となりますが……」 「ええ。常盤の方とお会いしたら、いたわってさし上げるのですよ、朝長」 「はい。元服している異母兄上と私は、北対へ気軽に赴くわけには参りませんが」  このように、ご自身のことのように心を痛め、案じていらっしゃる。  この広間に控えている女房たちも皆、気がかりであるようだ。  朝長異母兄上の言葉をお借りするなら、この中で、どの対へも気軽に赴けるのは童である私のみ。 「母上」 「何でしょう?」 「常盤の義母上の、お見舞いに伺ってもよろしいでしょうか? 南庭の花をさし上げたいのです」 「それは、良い考えですね。常盤の方の気が、少しは晴れるやもしれません」  母上はやさしく微笑んでくださった。  父上の様子を伺うと、了承の頷きを返してくださった。次いで近江に目配せすると、北対に伺って参ります、というお辞儀が返って参った。
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