藍色の夢

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藍色の夢

 誕生日当夜。いつものように、御帳台(みちょうだい)にて(ふすま)を掛けて眠りについた私は、夢を見た。  ──そこは、不思議な空間だった。  ふれる空気は、ほんのりと温かく。  広い空間には、くまなく張られた藍色の結界のみ。  ……藍は、虫よけ……  書物庫の文献には、藍の性質としてそう書かれていた。この結界は〝虫〟──つまり、外からの干渉を防ぐためのものだろう。  私の小狩衣も、藍色だった。  結界と小狩衣。  双方から神気を感じて間もなく、少し奥のほうに気配を見つけた。近づくと、柳のように佇む方がいらした。 「ようこそ、と言ったら良いのかしら」  少し低めの美声を、ゆったりと響かせてお話しになる、物腰の柔らかな方だった。  神気を纏い、人界の者と会われるのは……  私は、立礼にて臣下の礼をとった。 「お初にお目にかかります。私は、源義朝が三男、鬼武者と申します」 「綺麗な所作ね。あなたの〝気〟も清々しいわ」  この方は、私の容姿と幼名がつり合わぬ、と、お笑いにはならなかった。 「恐縮に存じます。あなた様は『神使の方』とお見受けいたしますが……」 「えぇ。よくわかったわね」 「かつて熱田神宮の大宮司を務めておりました祖父より、教わったことでございます」 「……そう」  事実を返答いたしただけなのだが、神気が揺らいだ。  思わず顔を上げてしまうと、神使の方はなぜか泣きそうな顔をしていらした。
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