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見上げると、神使の方は哀しげに微笑まれた。愛しき者を見るような眼差しで。
「……よく、似てるわね」
「祖父と、でございますか?」
「えぇ。顔も……霊力もね」
「未熟の身なれど、光栄に存じます」
顔立ちに関しては、母上がお祖父様に似ていらっしゃるゆえだろう。
霊力に関しては、大宮司を二十年以上も務められた偉大な方と似ているというのは、恐れ多いことだが嬉しく思う。
「同じ目をしてるわ。あなたにも、守りたいものがあるのね」
守りたい……私は、家族の顔を思い浮かべた。
「はい。何よりも、大切なものにございますゆえ」
「そう。強い心は大事よ。ただ……」
神使の方はすぐ傍までお寄りになり、私の頬にふれられた。距離が近くなった分、身の丈の差を、よりいっそう感じた。
「『そなた自身も、いたわるのだ』」
「……それは……」
「あなたのお祖父様からの伝言よ。悲鳴を上げてる、あなたの心を救って欲しいって」
「──っ」
私は、息を飲んだ。
「『家族に甘えることを、あの子は自身に許しておらぬ。その訳はわからぬが、〝家族〟の私では憂いを祓ってやれまい。……まことに遺憾ではあるが……』って」
「……お祖父様が、そのようなことを……」
お会いするたび、深い眼差しの奥が、私を案じてくださっていたことを思い出す──
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