☆1☆ ①

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☆1☆ ①

「――――んぅ……」  あれから三十分後ラットラルは医務室のベッドで目を覚ました。  まだ遊ぶのだとラットラルを離さないキャトルニアを何とか説得したゴーダが医務室に運んでくれたのだ。 「おや、目が覚めましたか?」 「はい。いつも申し訳ありません」  ラットラルはベッドでその小さな身体を起こすとペコリと頭を下げた。 「大丈夫ですよ。ここは医務室で、具合が悪い子のための場所なのですから遠慮はいらないのですよ」  と、兎の国人のラヴィ先生は言った。いつも優しくて温かくて大好きな先生だ。  この世界には人間と言われる種族はとうに絶えていて、獣人と言われる者たちだけが存在していた。  人々はそれぞれの国(種族)の特徴を持ち、衣服を身に纏い知能も種族差はあるものの概ね高かった。  二足で立ち両手(前脚)を起用に使う。  ラットラルはねずみの国人であるからその大きな耳と細く長いしっぽを持ち、身体も小さく力も弱い。  他の国の王子はいくつも魔法を使えたが、ラットラルが使える魔法はひとつもなかった。  その点でも他の国の王子より劣っており下に見られる原因だった。  ラットラルは軽く身なりを整えラヴィにペコリと頭を下げると医務室を出た。  また午後の授業に遅刻してしまった……。  ラットラルはため息を吐きとぼとぼと教室に向かって歩き出した。
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