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②
「で? 何をしておいでですか?」
山羊の国の王子ゴーダはモノクルを右手の人差し指で少しだけ押し上げた。
「何って見てわかるじゃん。ねずみと遊んでるとこ」
言われた通りねずみの国の王子ラットラルは猫の国の王子キャトルニアにむんずとしっぽを掴まれてぶんぶんと振り回されていた。
いや、ねずみで遊んでるの間違いでは? と少しだけ非難めいた視線を送るが口に出すことはない。
腐っても大国の王子なのである。キャトルニア本人はまったく気にしていないのだが、それが遊びにしろいじめにしろ可愛がりであってもねずみ一匹にかまけてばかりは許されなかった。
「さぁ、そろそろ午後の授業が始まりますのでラットラル君も準備などございましょう。遊びは終わりにしてさしあげては?」
ゴーダの言葉に明らかにむっとするキャトルニア。
瞳孔がきゅーっと縦に縮む。
「だってさーこいつまた猿のやつと遊んでやがったんだぜ? こいつは俺のなのにっまだぜんぜん遊び足らんっ」
そう言うとキャトルニアはなおもラットラルをぶんぶんと振り回す。
ゴーダは眉根を寄せた。
ここ最近猿の国の王子モントがラットラルにちょっかいをかけているのは知っていた。
モントの国は世界で中くらいに位置し、自分たちより劣ると思っている猫の国が上の存在であることが面白くないのだ。
だが世界でも最高レベルの警備体制の中、キャトルニア本人をどうこする事ができないと踏んだモントは、キャトルニアのお気に入りであるラットラルをどうにかしようと思っているようだった。
大事がなければいいが、とゴーダは思った。
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