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②
やっと解放されたラットラルはひとりでねずみの国に与えられた部屋に戻っているところだった。
「おや、ラットラル殿浮かない顔ですな」
一番会いたくない人に会ってしまった。モントだ。
にやにやしながら僕を見る。
いつもいつも僕にちょっかいをかけてくる。
モント一派にまるでボールのように投げられたり、泥を投げつけられたり、色々な嫌がらせをされた。
その度にラットラルがモントたちと遊んでいると勘違いしたキャトルニアが乱入してくるわけだが。
「来週行われるダンスパーティですがね、ドグディ殿がキャトルニア様にパートナーを申し込むそうですよ。貴方は……他に踊る方もいらっしゃらないでしょうし、私と踊りなさい」
「!? ――――っ」
断ろうと口を開くとモントはそのしっぽで僕の身体を撫であげた。
全身を走る嫌悪感。
「いいですか? 貴方は断れない。キャトルニア様はお優しいので貴方にパートナーを申し込むでしょう。キャトルニア様にはドグディ様のほうが貴方より相応しいのは貴方もおわかりでしょう? で、あれば、貴方の取る道は決まっておりますね?」
「――――踊りません」
「はい?」
「僕はあなたともキャトルニア殿下とも……誰とも踊りませんっ」
それだけ言うとラットラルはモントから逃げた。
その場には苦々しい顔をしたモントだけが残された。
キャトルニアに相応しくないのはラットラル自身がよくわかっていた事だった。
キャトルニアは粗暴でこちらの都合などお構いなしで振り回す(物理的にも)でも暖かいのだ。キャトルニアのラットラルを見つめる瞳はどこまでも暖かかった。
ラットラルの大きな瞳は涙で濡れていた。
それからのラットラルはパーティまでの一週間できるだけキャトルニアと顔を合わせないようにキャトルニアから逃げまくった。
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