【73】

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【73】

 告げられたのは日向の訃報だった。自宅にて亡くなっているのを、警察から連絡を受けた叔父が発見したという。  同居人であった叔父は出張中だったらしく、もっと早く帰って来ればと後悔していたそうだ。  死因は首吊りによるもので――自殺だった。  直ぐ近くに遺書が残されており、その中に罪を懺悔する内容が多く綴られていたらしい。  白都は日向と最後に会った日を思い出していた。  あの日が引き金になっていたとしたら。そう考えると、何て事をしてしまったのだろうと後悔が溢れ出す。  悪いのは罪を犯した日向だ。それは変わらない。自業自得だと攻めたって、誰も文句は言わないだろう。  けれど、死ではなく生きて罪を償って欲しかった。  明日の朝、期限が切れる。そうしたら御面に会って、全部暴いてやるつもりだった。  けれど、それももう必要がない。  急展開過ぎて実感は湧かない。加えて、理由を含む何もかもが明確にされておらず腑に落ちないが、御面との地獄が終わったと取っても良いだろう。  安堵と空しさが、涙になって落ちる。  白都は携帯を開き、今まで届いた全ての命令やルールを読み返す。それから、番号ごと全て消去した。 ***  そうして、何も無く期限日の朝が過ぎた。  本当は引き篭もっていたかったが、単位の関係で休めず、弱った体を駆使し大学に赴く。  日向の件があったからか和月は居らず、穂積だけが昼食に顔を出した。だが、変わらず顔色は悪い。  食堂にいるのに弁当箱も広げず、座り込んだまま無言を交じらせあう。  誰の名前も上がることは無く、顔も見合わせないまま時間を過ごした。
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