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鼻の奥がツンとし思わず目をそらす。
涙が出そうになるのを堪えた。
じわりと滲むインクのように彼の言葉が、停止した思考を再開させる。
「もう少し写真が有ればアルバムが出来上がるんだ。全部埋まるまで残りの夏で一緒に思い出を作ろうか」
「……その前に殴らせろ。この法螺吹き男が。」
海輝の胸元を掴んで拳を振り上げる。
彼は笑顔のままだ。
その顔を見ていると切ない様な嬉しい様な訳の分からない感情が押し寄せて、錦はそのまま目の前にある胸元に抱き着いた。
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