『羊を騙す狼の様な狡猾さ』

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 額から流れる汗をハンカチでぬぐい、直射日光を避けるための木陰を探しながら歩く下校道がいつも以上に長く感じる。  焼けたアスファルトから陽炎が立ち上がり、向かいから歩いてくる白いワンピース姿の女がゆがんで見えた。  赤くほてった頬、額に滲む汗、吐き出す息さえも熱くて不快指数が増した。  ハンカチで何度拭っても、水滴は滴る。  錦は閑静な住宅街を黙々と歩いていた。  道路を隔てて左側、小さな公園の入り口に自転車が三台倒れるようにして置かれている。  公園では数人の子供がサッカーに興じていた。  私服姿の子供の中には制服姿のままの子供の姿も混じっている。  帰宅後着替える時間も惜しみ年に一度の長期休暇を謳歌しようとしているのだろう。  この暑さの中元気なものだと感心する。
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