『羊を騙す狼の様な狡猾さ』

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 子供の声が遠く背後から聞こえ、遠ざかり、角を折れたのだろう――完全に聞こえなくなった。  不意にのどの強烈な渇きを覚えた。  他に誰もいない男と二人だけだ。  男が静かな視線を錦に絡ませる。  品定めするように、初対面にしては不躾なほどにじっくりと舐めるように。  そして形の良い唇を釣り上げてニィッと笑った。
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