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「まさか……」
錦の腕を引き玄関内側に招き入れるとドアを閉め、彼は式台に荷物を置き框に腰を下ろしスニーカーを脱ぐ。
「今ね大学一年生なんだ。夏休みだし、生活も落ち着いたから義弟にでも会おうと思ってたのさ。でも義父達は忙しそうだし?」
土間に立ったまま海輝の言葉を聞く。
男は誘拐犯でも何でもなかったのだ。
突然しらされた事実に自失した頭は思考を止めたまま上手く働かない。
夏休み中、錦を悩ましていた別離の苦しみがいまだ尾を引き、混乱の中で胸の奥に様々な不協和音が響く。
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