『一緒に思い出を作ろうか』

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「嫌いに何て……ならない」  強がっても、きっと見透かされている。  確実に義兄を前に劣等感で押し潰されていた。 「―――最近変質者が出たって友達に聞いてさ。学年違うんだけど友達の弟も君と同じ学校なんだ。まぁ、それで、迎えに行こうかなぁってあそこで待ってたの。で、驚かせようと思って。誘拐の真似ごとしようとしたら意外に君ノリノリだったからそのまま、誘拐犯になっちゃった」  抜け殻みたいな目をして。  君は何処でも良いから何処か遠くに行きたいって顔をしていた。  だから、見知らぬ大人になって遠くへ連れて行きたくなったの。  腰を掛けたまま、錦の両腕を掴んで下から顔を覗き込む。 「寂しいからって知らない大人について行ったら駄目だよ」
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