『真実など何も知らない愛されている子供で有り続けることは酷く苦痛だ。』

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 クラスメイトのはしゃぐ声を尻目に、朝比奈 錦は鞄に成績表と筆記用を入れ興奮の入り混じる喧噪から逃れるように、四年三組の教室を出た。  階段を下りて下駄箱に続く廊下に出たところで、山の様な荷物を時折廊下に置きながらなんとか下駄箱まで移動するクラスメイトに出会う。  パンパンになった袋を胸に抱きかかえているが、その両腕には紙袋がぶら下がっている。  肌に持ち手が食い込み赤くなっていた。  首からぶら下げられた画板が手提げ袋の下で揺れる有様は、実に見苦しい。  呆れた顔でふらつく小太りな姿を見ていると、相手がふとこちらを見て破顔した。
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