『真実など何も知らない愛されている子供で有り続けることは酷く苦痛だ。』

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「あぁ、朝比奈君」 「大変そうだな」  苦笑まじりにクラスメイトの隣に並ぶ。  ぜぇぜぇと苦しそうな息を吐いている。 「毎日ちょくちょく持ち帰ってれば、君みたいに身軽だったんだけどさぁ。なんか面倒で」  終業式には学校に置いている私物は全て持ち帰らなくてはならない。   体操着やシューズ、教科書はもちろんの事、図工の授業で作った工作や画板画材、他自由研究の作品に至るまで。 殆どの生徒が身軽な状態で帰れるように、最低でも終業式一週間前からは毎日不要なものを少しずつ持ち帰る。  しかし目の前の生徒の様に不精し、最終日に大荷物を抱えて帰ると言う生徒も珍しくはない。 「まぁ、どうせ、迎えが来てるしね。朝比奈君はもうお迎え来てるの?」  歩いて帰ると伝えると、彼は信じられないと言う風に細い目を見開く。  大げさな反応だ。
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