『真実など何も知らない愛されている子供で有り続けることは酷く苦痛だ。』

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 先日、変質者が出没し子供が車の中に引きずり込まれそうになったという事件が発生した。  誘拐か猥褻行為が目的かは不明だが、不審者はまだ捕まっていない。   幸い児童に被害はなかったが防犯面を考え送迎を心がける保護者が多い中、錦だけはいつも通り徒歩で登下校をしていた。  今日もそうだ。  両親が変質者の出没を知っているのかさえ怪しい。  もしも、錦自身が誘拐されたら彼らはどうするだろう。  ふとそんな事を考える。  取り乱すだろうか、それとも責任転嫁をし合うだろうか。  関心の有無以前に、自分は一応彼らの子供だ。  世間体もあるからきっと『一般的な親の反応』をするだろう。  それでも見てみたいなと、一瞬思ってしまった。  そこに錦の価値が映し出されるのではないか。  答えなど分かりきっているのに、それでも問いかけたいなど非生産的だ。 しかし、もしかしたら……。
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