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仲良く女性に向かい走っていく姉弟の背中を見ながら、無性にどこか遠くに行きたくなった。
強烈な飢えの様に、錦の心を支配する。
しかし、何処に行くと言うのだ。
錦の望む「どこかへ行きたい」は目の前の姉弟の様に、また、クラスメイト達が目を輝かせて話していたような、帰る場所が前提としてある旅でもない。
行き場所に目的があるわけではない。
ただの現実逃避だ。
何から逃げたいのか、良くわかっている。
だからそれ以上考えるのが嫌だった。
最終的には非生産的な自己嫌悪に陥るだけだ。
それでも、家に向かい一歩ずつ進む足は歩調は変わらないのに、やけに重く感じた。
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