『真実など何も知らない愛されている子供で有り続けることは酷く苦痛だ。』

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「帰りたくない」  小さく呟いてみるが、帰る場所など家しかない。  家族などの誰かの元と言うより、家という場所しかない。    経済力も、社会的な立場もない。  親の庇護下でしか生きて行けれない十歳の子供に過ぎない自身が、虐げられているわけでもあるまいし、環境に不満を言うのは間違っている。  それでも、時折何もかも捨てて逃げ出したくなる時があった。  あの家で、一月以上もある夏休みを過ごさなくてはいけないと思うと憂鬱だった。
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