2/6
前へ
/6ページ
次へ
大雨の中、哀は学校の門を出るというところで盛大に転けた。 「ほーら、やっぱり転けた」 「桜ぁ、ジャージ貸してぇ」 帰れないほどぐしゃぐしゃに制服を濡らした哀。まるで捨てられた子犬のような姿を見て、私は哀にジャージを貸した。 着替える為に校舎に戻ると、大量の下駄箱が並ぶ玄関は生徒で溢れかえっている。 一番玄関に近いトイレへ行くにはここを逆流しなければならない。まるで鯉が滝を登るようだ。 「渡り廊下側のドアから行こうか」 現実的に考えて、鯉は竜になれない。 私たちは玄関に背を向けた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加