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溢れ出す涙は雨と紛れてわからなくなっている。
他人から見れば雨の中突っ立っている女子生徒。しかしそんな判断を下す人は周囲にいなかった。
さっきまで騒がしかった学校は気付けば静かになっていた。混乱しすぎて頭が痛い。その痛みを和らげるように目を瞑る。
しかし、暗くなった世界に映るのは悲惨な哀の顔。
まるでまぶたの裏にあの光景が張り付いてしまったかのようだった。
突然ポケットの中のスマホが震えた。無意識に手を伸ばす。画面には非通知と書かれた着信画面が表示されていた。
「……もしもし」
誰の声でもよかった。自分は一人じゃないと言い聞かせたかった。
「もしもし」
知らない男の声。男から私に電話が来ることなんてない。電話帳には家族と一部の友達しか登録していないし。
「僕、あなたの事が好きです」
突然の告白に止まっていた思考が再び動き出す。
「……あなた、誰ですか?」
様々な出来事が立て続けに起きて、鈍くなっている頭を精一杯働かせる。なぜ、こんな時に。
「僕、あなたのことをずっと見てたんです。入学した時から。最初は見ているだけで幸せだった。でも次第に……欲しいな、って」
何を言っているのかわからない。
「……欲しいんです。あなたの全てが。だからジャージも」
思わず耳に当てていたスマホを投げる。スマホは雨に濡れた冷たいコンクリートに打ち付けられた。
まさか私のジャージを手に入れるために?
真っ白な頭は、一つの言葉で埋め尽くされた。
怖い。
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