マリオネットの喜び

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終章「マリオネットの物語り」 「そうしてマリオネットは人間に戻りました。」  語り終えた女性はふうと一息つき、もう冷めてしまった紅茶を飲む。 「物語の女の子もリリーって言うの?」 「ええ、私と同じ。」 「へー!!すごいねぇ。でも、私、その物語のリリーは好きじゃない。」 「どうして?」 「嫌いはとっても悲しい。」  少女はそういうとふくれっつらを見せた。女性は優しく少女の頭を撫でる。 「ふふっそうね。なら、アンジェは使わないようにしなきゃね。もし嫌いって言っちゃって後悔するならすぐにごめんなさいするのよ。」 「うん。アンジェ嫌いな子いないもん!」 「あら、みんな仲良しね。」 「うん!ねえ、ノワールはどうなったの?」 「それから、ハロルド叔父様と一緒に旅にでて綺麗な奥さんをもらったのよ。」 「へー!幸せだったんだね!」 「そうね。そうだといいわ。」  少女はくるくると回って女性に笑いかける。 「はぁ久々にお母様お話が聞けてよかった。紅茶淹れなおしてきますね。」 「ええ、ありがとう。とびっきり甘くして頂戴。」 「もう、糖尿病になりますよ。駄目です。」  そのやりとりが昔話をしたせいか懐かしく、温かい気持ちになった。 「アンジェ。笑うことを忘れちゃ駄目よ。」 「うん!!」  幼い笑顔を見るとあの頃の気持ちを少しだけ思い出せる。今までたくさんの経験をしてきた。笑って泣いて怒って夢を見たり挫折したり。 「そうね、私の喜びは…。」  そう呟いてアンジェの小さな身体をぎゅっと抱き寄せた。 「貴方の笑顔が見れた事かしら。」  女性はそう晴れわたる空をみつめて微笑んだ。少女の手には一冊の本。    作ハロルド・アレッター    題『マリオネットの喜び』                fin 
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