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「だれに追われる? ローザッハ兵か?」
おれが口をはさむ。
「いえ、ローザッハの人は関係ありません。むしろぼくによくしてくれました、あそこの人たちは。三年ほど、ローザッハの王都でゆっくり暮らすことができました。いい所でしたよ、ローズカッツの町は――」
「じゃあだれが追ってくる? さっさと言えよコラ」
「シャムルハーク。しずかに話をきくのだぞ。気がみじかいのは、よくないのだぞ?」
女王がおれの肩をこづく。あ、わりぃ、とおれは頭をかく。ま、おっしゃる通りおれは短気なたちだからな、ふん。
「エル・ザドーナ」
ワカモノが、ぼそっとつぶやいた。
「エル……? ほう? それってーのは、あのいわゆる西域の? 神聖帝国?」
「はい」
「そいつはレアだな。めずらしい。ひょっとしておまえ、あそこの出身者か?」
「ええ、まあ、いちおうはね。生まれは、だいぶはずれの方だけど」
「おまえ、そこで何をした? 殺人? 強盗? 女をだました?」
「えっと、いえいえ。そういうのではないんですが、まあそうか、でもある意味、それもふくめて、いろいろと」
「おいこら、じらせるな。言えよ。たとえば何だ?」
「報告!」「報告!」
「緊急のです!」「のです!」
あわたただしくかけこんできたのは、岩鬼の警備兵たち。
「どうした? 敵か?」
おれは瞬時に立ち上がる。
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