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4 守備隊長シャムルハーク
石の階段を上がる。上がる。
くそ、長い階段だな、いつもながら。しかしほんとなのか? 巡回に出ていたシヴァ鳥が、ローザッハのスパイを捕えた?
まあ、ありえない話でもないか。しかし敵さん、どういうつもりだ? あるいはほかにも、敵の工作兵がここらをうろついている? だとすればまずいな。非常にまずい。とりあえずその、そいつをだな、てっとりばやく痛めつけて口をわらせよう。まずはそれだ。ああくそ、まだあと何段あるんだ、このクソッたれの曲がり階段はよ??
「おお、長くお待ちばいましたよ」
「中におりまするわ。どうやら寝ているようでがな」
岩鬼(グモル)の番兵が二人、扉の前で待っていた。岩みたいにゴツい体をゆすって口々に何か言っているが、グモルなまりがキツくてよくわからん。
「どうだ? 危険そうか? 武器はとりあげたんだろうな?」
「いえいえ、それはまだまだのす」
「つれてきたシヴァ鳥は、武器の話は何ばもせんで」
「あ、そういえばひとつ背中の長荷物のありどした」
「あったごす。あったごす。だけんど中身は見んでしたばい。あれ、武器もしか――」
「あと、縄はまだざす」
「…んだと??」
「なわ、ざすどすな。ちょうどいい長さの、見つからんごして――」
「バカやろう! 敵の武装を解かずにそのまま? しばってもいないだと? ありえねー。何年ここの見張りをやってんだ、てめーら?」
おれは最高にいらいらしてどなる。
「す、すいませんですら」
「あまりなれない仕事だもので、どうもです」
「おい、いいか、おれが最初に入る。援護しろよ、お前ら? まえに訓練したよな? な?」
「く、訓練ば、しまいまいた」
「大丈夫ざす。やりますら」
くそっ。使えねー連中だな、これは。
おれはそれでも、とりあえず冷静に。
扉の鍵をしずかにまわし、わずかに隙間をあけ、中をのぞきみる。
む、
寝ている、な。あれはたしかに。
熟睡している。爆睡だな。いびきすらかいている。おお、いい度胸だな、あの野郎。かなりの年季が入ったツワモノか、あるいは完全にこっちをナメきっているのか。
あるいはひょっとしたらあれ、巧妙な演技か? 寝たふりってやつ? そうなのか? む、かもしれんな。どっちにしても油断ならねー。
おれは目だけで岩鬼の兵士に合図する。音をたてずに扉をわずかに押す。隙間から体をすべらせ、最小限の動作でそこに寝ているそいつとの距離をつめた。直後におれの足先は、そいつの横腹をしたたかに蹴りぬく。手ごたえ、いや、足ごたえがあった。かなりヒットした、よな?
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