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「くぅおおぉらぁぁぁぁ! シャムルハークぅう!」
大声と同時に、バンッと音をたてて扉が全開。
とびこんできた、その――
「まえまえから、なんかいもなんかいも言ったのだぞ? ごーもんとか、やめなさいと、言ったのだぞ? それはわたしとても好きくないと、なんかいも言わせたのだぞ? それをおまえ、またやるつもりなのか? そうなのか?」
その人物が、オトコの首を全力でをしめあげる。おお、すごいな、強い。たすかった。だれか知らないけど、とりあえず助かったよ。指はつながった。ありがとう、その人。だれか知らないけど。あれ、でも女のヒト? なんか髪が長めだけど?
「ネコねーちゃん?? なんでここに?」
オトコは動揺をかくせない。
「ねこねーちゃんではないのだぞ! 女王とよべと言ったのだぞ!」
「わ、わかったよネコねーちゃん。だけどあんた、げほっ、いつからここに?」
「いまさっきついたのだぞ?」
「きいてねえ」
「言わなかったからな」
「なにしにきた?」
「いくさを見にきたのだぞ」
「つまり前線視察?」
「た、たぶんそうなのだぞ」
「あ、わりい、言葉むずかしかったか?」
「む、むずかしくないぞ。ちゃんとわかったのだぞ、わたし」
「おいあんた、だけど助かったな、あとでこの人に礼を言っとけ、」
オトコがこちらを見て言った。
「とりあえず、指はつながったな。大事にしろよ、指は」
大事にするよ! ってか、あんたでしょむしろ、大事にするべきなのは! ぼくは心の中ではげしくつっこみまくった。
ふう、いやだけど、何だこれ? なに、この展開? 女王って言った? たしかに言ったよね? 女王??
「すまなかったのだ、わかいヒト、」
その人が、身を低くしてぼくの耳元で言う。
「とてもらんぼうだが、わるいニンゲンではないのだ、この、シャムルハーク」
「はぁ、」
「たてるのか?」
「……たてないです」
「どうしてだ?」
「どうしてって、ほら、しばられてるし――」
「ああ、そうだな。すまなかったのだ。今ほどくから、待つのだぞ」
「おいおいネコねーちゃん、そいつはまだ危険かも――」
「シャムルハークはだまるのだ」
「だまらねーよ!」
「ホリョはタイセツに、なのだぞ?」
「ん? 何? いま、なんつった?」
「あるるじゃんぬ条約というのが、あるのだぞ。知っていなかったのか?」
「きいたこともねーよ、んなのはよ」
「はぁ。これだからやばんニンゲンなのだな、シャムルハークは」
「ニンゲンですらないあんたに言われたかねー」
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