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「あのー、」
「何だ?」
「あの人たち、妖精(ニノノ)、ですか?」
「まあ、そうだな。何とかっていう地霊(トノン)の一族らしいが。長い名前だからおれも正確な名は忘れちまった。癒しと治療が専門の種族なんだが、とりあえず数が多くてうるさくてかなわん。一時間つきあってたら、こっちのアタマがどーにかなりそうだぜ」
「ん、まあ、わかりますね、少し」
「だが意外にも治療の腕はたしかだ。あいつらにやらすと、ヘタな人間のヤブ医者の半分の時間で傷がなおる。だからまあ、おれもそこのところだけは評価しているってわけで」
「あ、そうですね。いわれてみれば。けっこうひどくくじいたと思ったけど、もうかなり良くなった」
「……ほんとに仮病じゃなくてか? ケガのふりだったんじゃねーのか? 演技の?」
「まさか。ほんとにケガしてたんですよ。崖で足をふみはずしたとき、ひねっちゃって」
「ふん、どうだかな。まだおれはお前のことがいまいち信じきれねー」
鎧オトコは話をそこで打ち切り、先にたって階段をのぼる。長い長い石の階段を上りきると、天井の低い暗い通路がつづく。通路の奥の扉をくぐると、とつぜん広い場所に出た。おお、なんかすごいな、ここは。天井、高っ!
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