私の子供は

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幽世の女が人間の子供を育てるのは難しかった。まず、何を与えていいのか分からない。魂や魔力を源とすることが出来ない人間の子供が何を食べるのかも分からず、ひとまず現世にもあるものをと林檎を用意してみたが人間の子供には牙が無いことを初めて知り、すりおろして食べさせた。身体が弱いのか、頻繁に熱を出しその度に薬を調合した。夜に眠らず魔法で眠らせたが、そうすると今度は全く起きない。一度泣くと中々泣き止まず何故泣いているのかも分からない。女は数々の苦労をして子供を育てた。 そして、時を同じくして。 現世の女が子供を育てるのは難しかった。まず、何を与えていいのか分からない。母乳を飲ませようとしても牙が鋭く、牛乳も山羊乳も嫌がった。最終的に林檎をすりおろして食べさせたがそれも多くは食べない。夜泣きが酷くて一晩中夫婦が寝られない夜も数知れず。病気はしなかったが怪我が多く、一瞬たりとも目が離せない。そして子供が産まれてから──正確には取り違えてから──街には不幸が続いた。犯罪、訃報、倒産、病魔に災害……街の住民は子供を"悪魔の子"として忌み嫌った。しかし女はなんとか子供を育てようと努力した。 そうして、一年が経った。
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