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あの日と同じように、鏡を通る。白い布を敷いた籠に、一年育てた子供を寝かせて。
一年振りに訪れた現世は、以前より荒廃し殺伐とした雰囲気だった。街に活気は無く、住民の顔も暗い。しかしそんなことは関係ない、今は子供のことが気掛かりだった。街中くまなく探したがあの時の女も子供も見当たらない。もう会えないのでは、そう頭をよぎった時、街の外れにある森に小屋があることに気が付いた。気配を消し、近くで様子を伺う。すると──
「あの子は……私の、私の、」
古びたベッドで寄り添うように丸まって眠る女と──赤毛の女の子がそこにいた。
2人ともぐっすり眠っている。少しくらいの音では気付くことはないだろう。幽世の女は籠に手をかける。ようやく逢える、私の、私の可愛い愛し子よ──
──でも、この子は?
女は、それ以上動けなかった。
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